子供を寝かしつけてから

「よしツ、もう決心した。これから俺は東京市民にならなければならないんだからね、浮《う》か/\してもゐられまい。」彼は、生真面目な心でさう云つた。周子に非難されてゐる事実ばかりでなく、広く自分の生活にそんな風な楔を打たなければならない気がした。 その晩も滝野は、遅くまで帰らなかつた。 周子は、子供...

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田舎なまりの語尾になる

「無論だア。」滝野は、ちよつと亢奮すると田舎なまりの語尾になるのが常だつた。「ぢや今度から、酔つた時は何をやるの? いくら口惜しくつたつて、あれより他のことは出来ないでせう!」「余計なお世話だい。」 滝野は、唇を噛んでゐた。何か他に出来ることがあるかしら? とちよつとムキになつて考へて見たが、...

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身動きもせず

 滝野は、身動きもせず凝つと煙草を喫してゐるばかしだつた。そして小声で、「ゆうべも酷かつたかね。」と訊ねた。「ほんとうにあなた、何かお習ひなさいよ、ちやんと纏つた芸を――」「何が好いだらう、長唄でも……」「声が悪いから、それもね……」さう云つて周子は、苦笑を浮べた。「ゆうべはどんなに騒いだ...

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