案外芝居でもないらしく

「僕がね、僕がね……」純吉は、上ツ調子ではあるが、重苦しく妙に吃つて「その僕がね、実は、もう一ト月も前から書きかけて、そして行き悩んでゐる小説といふのが――だ。つまり、その、例の、小説に書くことがなくて閉口してゐることを取材にした小説なんだ。……斯んなことは毛頭云ひたくない、君がさつきからあまり親切...

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文学青年

「小説が書けないで閉口することを小説にした小説が往々あるが、その種の小説程馬鹿/\しい物が、またとあるだらうか!」 純吉は、さつき云はうとしたところに漸く話を戻して、いかにも立派な意見でも吐いたかのやうに重々しく呟いた。「俺はそんな小説は、てんで読んだこともないから知らないがね。」と川瀬は、空々...

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死んだやうに眠つてゐた

 田舎にゐるうちは、部屋が別々だつたので夫が稀に書斎に引き籠ることが続いても、何をしてゐるか周子には解らなかつたが、此処に借りた部屋は六畳二間が続いて二つあるだけで、書斎と居間の区別もあつたものではなく、夫のそんな発作に出会ふと、凡ての動作が彼女に観察出来るのだつた。気の毒な程だつた。 滝野は、窓...

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