その晩も、また滝野は机の前で徹夜した

 斯んなに読んでも、未だ滝野は身動ぎもせずに眠つてゐるが、周子は酷い退屈を覚え、この先読み続けるのは、頼まれても厭な気がした。――あんなに業々しい態度で、夜となく昼となく机の前を離れずに考へ、そして書いたことが、斯んな馬鹿/\しい愚痴だつたか、と思ふと軽蔑の念はおろか、彼女は肚もたゝなかつた。 そ...

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夢から醒めた気がした

 おや/\、俺は今川瀬と、何の話をしてゐたのだつたかな――純吉は、夢から醒めた気がした。(あゝ、さうだつた、俺はさつき好い加減な出たら目を川瀬に話してゐたんだ。)「うむ、書き続ける気だ。」純吉は、意味あり気にうなつた。 実際彼が、さつき川瀬に、小説が書けないで困つたことを材料にした小説を、もう一...

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案外芝居でもないらしく

「僕がね、僕がね……」純吉は、上ツ調子ではあるが、重苦しく妙に吃つて「その僕がね、実は、もう一ト月も前から書きかけて、そして行き悩んでゐる小説といふのが――だ。つまり、その、例の、小説に書くことがなくて閉口してゐることを取材にした小説なんだ。……斯んなことは毛頭云ひたくない、君がさつきからあまり親切...

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