独りで築地へ行く気がしなかった

 お庄はまだ思い断《き》って、独りで築地へ行く気がしなかった。それよりは、浅草の方へ帰って行った方が、まだしも気楽なように思えた。そして時々立ち停って思案していた。 浅草へ帰ったのは、八時ごろであった。お庄は馬車を降りると、何とはなし仲居の方へ入って行ったが、しばらくそこらを彷徨《ぶらつ》いている...

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化粧《つくり》などはいい加減にして

「どうせそれは楽じゃないわ。」と、お庄も鏡に映る自分の髪の形に見入りながら、気なしに言った。「今初めてそんなことが解っただか。お前が独りで口を拵えて行ったじゃないかえ。」 お庄も糺も黙っていた。「さあ、若いものは遅くなると危いで、化粧《つくり》などはいい加減にして、早くおいでと言うに。」と、婆...

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窓のところへ寄って来て

 二階では、取っ着きの明るい部屋で、糺《ただす》が褞袍《どてら》を着込んで、机に向って本を見ていた。「御免なさい。」と言って、お庄はそこへ上り込んで行った。「誰か来ているのかと思ったらお庄か。」従兄《いとこ》はこっちを向いて、長い煙管《きせる》を取り上げた。 お庄は挨拶をすますと、窓のところへ...

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